ピアノ弦を全交換するメリット、デメリット
現在修復中のピアノの弦交換がもうすぐ終了なのでその前に少し触れておきます。
当工房で販売する中古ピアノは全てピアノ弦(ピアノ線)を新品に交換しています。かなりの労力が必要な作業で、お手持ちのピアノの弦を全て交換となると中古ピアノ1台分近くの費用が必要となります。
ではなぜそこまでする必要があるのか、メリットとデメリットともに書いてみます。
ピアノ弦には寿命があります。管理状態にもよりますが、一般的には20〜30年と言われています。鋼鉄製のピアノ弦ですが、経時とともに弾力性が失われ、サビや汚れ、金属疲労による断線など様々な症状が出てきます。
もちろん断線の場合を除けばそのまま使用していただいても全く問題はないのですが、音色には大きく影響してきます。
下の図は、ピアノ弦1音分(1つの音に対して3本の弦が張られています)の断面図です。
上の図でご覧いただけるように、経年劣化により弦振動に乱れが生じ、プレーヤーには『濁り』となって認識されます。各音でその濁り方も違ってきます。調律師はその差を無くすための調整をするのですが、経年とともに段々とその差を埋めるのも難しくなっています。もちろん比べなければ分からないのでほとんどのユーザーは意識することはありませんが、新品と比べると一聴瞭然。新品の弦の音の透明度、深み、伸び、全てにおいて違います。
一方でデメリットも多少あります。
新品弦はとにかく狂う。調律やってもやっても直後から狂ってきます。安定するまで数ヶ月から数年かかることもありますのでレッスンに支障が及ぶこともあります。また『濁り』を『味』として好まれるプレーヤーもいらっしゃるので調律師は『何がなんでも交換した方が良い』とは言いません。
売る方からすると出荷が数ヶ月遅れてしまうので、販売店としてはやりたがらないかもしれませんが、購入後のピアノ弦の全交換は、ユーザーに不自由をおかけする可能性があるので、中古ピアノとして再生作業時が最適な交換時なのです。ここで交換しないといつ交換するのよ。
Ottimo articolo tecnico.Grazie!
Grazie!