サルでもわかる平均律
ピアノやオルガンのように演奏者が演奏中に音程を調整できない楽器に使われている音律『平均律』そもそも平均律って何?
ものすごく簡単に言うと1オクターブ内に12の音を均等に配列した音階なのですが、そう言うと一見『均等』なんだから調和が取れた綺麗な音階をイメージするかもしれませが、音楽的に綺麗なのかどうかは別問題。
そもそも音階とはどのように作られているのでしょうか。
例えば、C(ド)の音から5度ずつ上に上がっていくと
(五度圏)
C-G-D-A-E-B-F#-C#-G#-D#-A#-F-C
12回目(12音目)に再び C(ド)に戻ります。よく見るとこの12音が1オクターブ内の全ての音になることにお気付きでしょうか。そう、この12音が音階を構成しています。
で、この5度ずつの『5度』が唸りが無い状態、且つ12音目のCが最初の C を唸り(ズレ)なく見事に重なるなら(閉じた状態)学者を悩ますこと無く、おそらくなんの問題もなかったでしょう。
ところが、完全5度の周波数の比率は3:2(例えば『ド』の完全5度上の『ソ』は『ド』の弦の長さの3分の2の長さの部分で鳴っている倍音)1オクターブは2:1(弦の2分の1で鳴っている倍音)*参照『ピアノの440hzの1オクターブ上の音が880hzにならない理由』
即ち、5度を12回重ねた音とオクターブを7回重ねた音は
(3/2)の12乗:(2/1)の7乗
↓
3の12乗:2の19乗
↓
531441:524288
となり一致しません。両音の隔たりはピタゴラス・コンマと呼ばれる差、23.46セント(後述)ほど高くなってしまいます。
そこで考えだされたのが平均律。
調律の世界で音の隔たりを表す単位として『セント(cents)』という単位が使われます。1オクターブを1200セントにして12音を均等に割ってしまおう。1オクターブを12音で割った半音が100セントの隔たりということになります。故に平均律で完全5度は700セントの隔たりと言う事になります。先の五度圏でCーCは
700×12:1200×7
↓
8400:8400
となり閉じた状態になります。対して純正律の完全5度をセントに置き換えると約702セント*¹。12回重ねると差の分 2×12 でピタゴラス・コンマ分の約24セント高くなり閉じていません。
大雑把に言うなら、平均律とはピタゴラス・コンマなどの音のズレを配分し目立たなくした音律と言う事になります。
おかげで、和音は薄っすらと濁っている*²反面、どの調でも演奏できるという特典付き。ここへ至るまでに紆余曲折が有ったようですが、それはまた別の機会に。
*¹ 平均律の完全5度は純正律の完全5度よりも2セント狭い(低い)と言う事になります。
*² 平均律ではオクターブ以外の和音は全て濁っているということです。