WAGNER W-3 修復(その2)
アクションの調整。いつもどおり消耗パーツの交換と今回はこのピアノのウィークポイントの一つ特にハンマーの調整について書いてみます。
このピアノはアクションの背骨に当たる『センターレール』とフレンジ(ハンマーをセンターレールに取り付けている部品)は共に木製、ヤマハはセンターレールはアルミ製フレンジは木製、カワイはセンターレールはアルミ製フレンジは樹脂製となってたりします。それぞれ一長一短がありメーカーそれぞれの考えがあって面白いですね。
余談ですが、このピアノの場合、木製センターレールに反りや共振を防ぐために金属製のレールが取り付けられています。
さて、木製センターレールのハンマー調整はシビアな面を持っていて、このピアノの調整ポイントとなります。
ハンマーの調整は主に『ガタ(ネジの緩みなどによる文字通りガタツキ)』『シャン(ニカワ(接着剤)の割れなどによる雑音)』『走り』と『ねじれ』などがあります。『走り』と『ねじれ』それぞれを簡単に図で見ると以下のようになります。
上の図のパターンで言うと、ハンマーが右へ走っているのでフレンジの左側に紙を貼って向きを左方向へ調節します。
左方向へ調整するとハンマーの向きが左側へ向いた状態になり(上の図の右側)ますので右向きに『ねじれ』を調整すると、静止状態から正しく動くようになります。ねじれは電気コテなどで温めて調整します。
また木製センターレールの場合フレンジ取り付けネジが緩み気味なので、調律の際に何度も締め直しが行われるため、長年の増し締めでネジが固定できない『バカネジ』状態も見受けられますので全てのネジ一つ一つのチェック及び修理が必要です。
これらの調整がキチンと行われていない中古ピアノは、買ってもすぐにハンマーがガタガタになってしまいます。購入後も技術力のある調律師が必要になります。それらをクリアできるなら大手メーカーでは得られない素晴らしい音を安価に手に入れることも可能です。ちなみにアルミレールのヤマハ、カワイはネジの緩みはほとんど見受けられません。木製フレンジのヤマハは更に緩み防止のバネワッシャーも使われています。
お手持ちのピアノや購入予定ピアノのセンターレールが何製なのか情報として聞いてみるのも良いかも知れませんよ。弾いたとき、指先に細かな振動を感じるならこれらの調整が必要かもしれません。
ハンマーはドイツのレンナー社製のものが使われていますので、そのまま使用することにします。