ピアノの音をチューナーで見てみる(動画あり)
エントリは消えてしまいましたが、以前に『どうして機械で調律しないの?』というエントリを書いた事がありました。そこでは理由にいろいろ小難しい事を書きましたが、その中の一つに一般的なチューナーではピアノの音は拾えない的な事を書きました。それはどういう事かと言いますと、これを見ていただければ一目瞭然です。
使用したチューナーソフトは、Macユーザーなら良くご存知の、その名もズバリ『Piano Tuner($99)』。公式サイトでは『チューニング・レバーを使って自分のピアノの調律を覚えたい人やプロのピアノ調律師が利用できるように作られています』とハッキリ書いていますので、一般的なものよりやや専門的に振ったものです。営業妨害にならない程度に書きますね。(注意:価格は掲載時点のものです)
では、実際に動画を見ていただきましょう。ここで、知っておいていただきたい事は、ピアノには一つの音に対して3本の弦が張られているのですが、ズレがあってはダメなので2本はミュートして1本だけ鳴らしています。それから私はチューニングハンマーには触れていません。全くのフリーでピアノ線の音を1本だけ鳴らしていますので、その時のチューナーの動きを見てください。
ね。プラスになったりマイナスになったり、全く安定していないでしょ。この様に、我が家のピアノがポンコツである事を差し引いても、ピアノの弦は非常に複雑な動きをしているのです。今回はMacBook標準のマイクで拾ったので、高性能のマイクで拾えばもう少し安定して、ブルーのストロボ位は止まるかもしれませんが(ストロボは映像で観るよりも肉眼の方が安定して見えます)、激しく動く数字はピッタリと止まる事は無いでしょう。私の持っているその他の単体チューナーやiPhoneのチューナーアプリでも同じです。ピタッと数字を止める事は不可能なんです。なので、調律師が機械を持ってお客様宅へ伺う時は、何か特別な理由(要望があったり、特殊な楽器である場合)がある場合のみなのです(少なくとも私は)。
最後に、このソフトの名誉の為に付け加えておきます。決してソフトの性能が悪い訳ではなく、むしろこのソフトは『調律』を謳っているだけあって、ちゃんと調律師も使える様に出来ています。少し専門的になりますが下の画像を見てください。
A3を基準『+-0』とした時(左側の赤い矢印)、その4度上のD3をグリーンの色になる様に合わせると『+1cents)』になっています(右側の赤い矢印)。この時の4度の響きは、(注1)ほぼ平均率の響きになっています。この事から、このソフトは平均率の(注2)調律カーブに基付き作られている事が解ります。が、こうやって合わせるには経験に基づく繊細なハンマー操作が必要で、一般の人が同じ様にピアノを調律する事は事実上不可能です。サイトの説明文に書かれている様に、調律を勉強中の学生やプロの調律師が使用するソフトだと思ってください。
(注1)(注2)調律カーブとはオクターブの距離が計算上よりも高音部や低音部へ行くに従い徐々に広くなっていく度合の事を言い、それらはピアノの大きさや種類によって異なるカーブ曲線を描きます。