調律のセカンドオピニオン
先日お伺いした新規のお客様からのご依頼はこのような理由からでした『半年前に別の調律師にやってもらったのだが、1ヶ月ほどで音が変になってきたので調律師を変えてみた』と。
なるほど音が大きく狂っています。そこでピアノ内部にある記録用紙を見てみると、お客様の仰るように半年ほど前に調律をやっているのですが、その前が15年ほど空いていました。
ピアノを含む弦楽器などは年時が経過するほど狂いが大きくなっていく事は一般の方でもご理解いただけると思うのですが、その際に知っておいていただきたい事を、ものすごく大ざっぱですが解りやすく説明します。
例えば解りやすく15年経過した音の狂いを仮に『100』とすると調律1年後の狂いは『50』になり、そこで調律をすると、そのまた1年後の狂いは『25』になり、また調律をすると1年後には『12.5』と、回数を重ねるごとに狂いは小さくなっていきます。この狂う数字は理論上『0』にはなりませんのである程度まで行くと1年の狂いはほぼ同じ数字になります。ここではその数字を『5』としましょう。毎年調律をやっているピアノの狂いを『10』とすると1年後には『5』しか狂わないという事です。
なので15年ぶりに調律をやったピアノと毎年調律をやっているピアノと1年後の音の状態を見ると上記の例で言うと『50』と『5』で10倍の差があるという事なので、前途のお客様が1ヶ月で音がおかしくなったと感じるのは当然なのです。調律師の技量によって多少の違いがある事は確かですが基本的には同じ理論が当てはまります。
もちろん、あまりにも年数が空いて狂いが大きい場合、調律師は1回の訪問で何回通りも調律をやって出来るだけ狂う量を少なくする努力をしますが、そうなると時間も費用も必要となります。
なので、年数空きのピアノの場合先ず『調律できる状態にする』が第一目的と言えるので、その時1回だけ調律をするだけでは、ほとんど意味がありません。1回の調律で毎年調律をやっているピアノと同じ状態にする事は、どんなにベテランの調律師でもピアノの構造上、不可能なのです。
このようなセカンドオピニオン的なご依頼は年に2〜3件あるのですが、30年近くこの仕事をやってきて、これは明らかな手抜きだなと思うような症例はゼロだったとは残念ながら言えませんが、少なくとも調律師協会会員では皆無だった事を付け加えておきます。が、気になる方は遠慮なく最寄りの調律師にご相談ください。下記のリンクに会員名簿がありますので参考に。