世界一簡単な古典調律解説『中全音率』編
時々古典調律について聞かれることがあるのですが、ネットで検索しても難しいことばかり書かれていて素人には理解が難しい。
で、機会を見てチョ〜簡単に解説させていただきたいと思ういます。まずは『中全音律(ミーントーン)』から。
音楽がまだ短旋律だった大昔のある日『あれ?2つの別の音を重ねると綺麗じゃね?』と気がつきました。それが完全5度(ド-ソなど)そして考え出されたのがピタゴラス音律。
時が流れたある日『あれ?3つの別の音を重ねたらさらに綺麗じゃね?』と気がつきました。ド-ミ-ソなど。ところがピタゴラス音律だと、ド-ミの長三度が非常に濁ってしまう。
中全音律は大雑把にいうと長三度を純正(唸りが無い)にした調律のことを呼びます。全音の音程が純正率の大全音と小全音の間の大きさとなるために中全音律と呼ばれます。
以前に紹介した五度を美しくしたピタゴラス音律から進化し、例えばC(ド)から上に向かって五度ずつ上がると4個目にE(ミ)がきますが(そのEを2オクターブ下げるとC-Eで長三度)純正のEと比べると高い音程となりC-E(長三度)間で唸りが生じてしまいますので(ピタゴラス音律の長三度と純正の長三度の差をシントニックコンマと呼びます)、高くなってしまう分を五度に均等に振り分けて(少し狭めることにより)Eをシントニックコンマ分、約21.51セント下げることにより、長三度が美しく響く音律として考案されました。
CーGーAーE(ピタゴラス)
C–G–A–E (中全音律)
└ 純正 ┘
これで美しい長三度のハーモニーが楽しめるようになりました。
ただし問題も。五度が少し狭くなってしまうことは気になるほどでは無いものの、シワ寄せが来る1箇所だけ長三度の響きが極端に悪くなってしまいます。なのでその和音を使用する調は弾くことができない。
モーツアルトなどや平均律が一般化するまでの時代の曲に、例えば嬰ト短調など#や♭の数が多い曲が無いのはそのためです。
それでも1つの調しか使用できない純正調より当時としてはフレキシブルな調律だったのでした。
ちなみに、その1箇所の唸りを分散させる様な調整方も開発され、中全音律にはいくつかのバージョンも存在します。