ピアノの調律って?




『調律師さんって、絶対音感が有るの?』と、お客様によく尋ねられます。残念ながら私には絶対音感は有りません。では何故ピアノの音を合わす事が出来るのでしょうか?それは音感(勘)で合わせているのではないからです。

一つ実験をしてみましょう。ピアノの前に座って真ん中の『ラ』の音を弾いてみましょう。『ポ〜ン』ときれいな音が鳴りましたか?では次に3度下の『ファ』の音を弾いてみましょう。『ポ〜ン』と鳴りましたか?それでは2つの音を同時に鳴らしてみましょう。『ポ〜ン』。美しい和音が響きましたでしょうか?もう一度弾いてみましょう。『ポ〜ン』。よ〜く聴いてください、『ポ〜ン』と響く中に『ララララララ….』と波打つ音が聞こえませんか?そう、小学校で習いましたね、これが『音の干渉』と呼ばれる現象です。調律師はこの音の干渉を利用して調律しているのです。

*調律しないとどうなるの?*

ピアノには約230本もの弦(ピアノ線)が張られていて、総張力は20トンにも及び、その張力により時間が経つにつれて少しずつ音が下がってしまいます。ずれた音でのレッスンは、まちがった音感がついてしまうだけでなく、ストレスの原因にもなります。また、長期間調律しなかった場合、ピアノに大きな負担がかかるだけでなく、正しい音程にもどすのに大変な時間と労力と費用がかかり、木材の腐食、金属のサビ、ゴムの劣化等によりピアノの寿命を縮める事になります。

他にもピアノには多くの木材やフェルト、クロス等の部品や、アクションには100分の2ミリ以下の精密な部品が使われています。これらは温度、湿度の変化や使用による磨耗によりタッチの狂いが生じます。狂ったタッチでは上手く弾けないのはもちろん、腱鞘炎(けんしょうえん)等の原因にもなります。

ピアノ製作には貴重な木材が大量に必要となります。限りある資源を大切に、今御使用のピアノを次の世代に伝えるために、年に1、2回は、使用の有無にかかわらず定期的に調律されることをお勧めします。